ヴァレリー・アファナシエフ
TIME 第3年(3回シリーズ)
2023年11月30日(木) 19:00開演
全席指定 11,000円
Message from the Artist
日本の皆さまへ
今回の日本公演では、プロコフィエフとドビュッシーの作品を再び取り上げます。いずれも、私が久しく知っている作品たちです。逆もまた然り。作品たちも、数十年前から私の指と耳を知っています。いっぽう私にとって、ウクライナ出身の作曲家シルヴェストロフは、わりあいに“新顔”です。私がシルヴェストロフとその作品に出会ったのは、今世紀のはじめ――現実との闘いにおいて記憶が優位に立ちはじめた頃でした。いかなる物も人も、遠く離れてはいません。おそらくシューベルトは昨日この世に生まれました。あるいはそれは、昨日の事のようです。シルヴェストロフが近ごろ手がけた音楽を聴き・奏でる私は、“昨日/イエスタディ”を弾き、ビートルズの「イエスタディ」も弾いているのです。
ドビュッシーは、ボリス・ゴドゥノフはペレアスの祖父だと述べました。ことによると私はプロコフィエフの叔父かもしれません。ならば私は、聴衆の皆さまを親族の集いにお迎えしましょう。そしてシルヴェストロフの比類なき崇高な思い出と今日の現実に思いを馳せつつ、彼に万歳三唱を。
ヴァレリー・アファナシエフ
シルヴェストロフ:オーラルミュージック 第1番
:オーラルミュージック 第2番
ドビュッシー:3つの前奏曲
帆/夕べの大気に漂う音と香り/雪の上の足跡
********** 休憩 **********
ドビュッシー:月の光
:2つの前奏曲
デルフィの舞姫/沈める寺
プロコフィエフ:風刺 Op.17
Ⅰ.嵐のように/Ⅱ.間のびしたアレグロ/Ⅲ.せきたてるアレグロ/Ⅳ.狂気したように/Ⅴ.激しくせきたてるように
ヴァレリー・アファナシエフ(ピアノ) 1947年モスクワ生まれ。モスクワ音楽院にてヤコフ・ザークとエミール・ギレリスに師事。2つの世界屈指のコンクール――ライプツィヒのバッハ国際コンクール(68年)およびブリュッセルのエリーザベト王妃国際音楽コンクール(72年)――で優勝を飾った。74年に政治亡命者としてベルギーに保護を求め、現在、同国で暮らしている。西側への亡命後、ヨーロッパはもとより、日本、中国、オーストラリア、アメリカ合衆国などで演奏活動を続けてきた。アファナシエフはこれまで、みずから執筆した解説を添えたアルバムを約70作リリースしている。彼のねらいは、作曲家の意向をめぐる自身の洞察の全体像を聴き手に示すことにある。この試みは、アファナシエフが詩的な錬金術を展開する実験工房への“ガイド付きツアー”にたとえられる。そこでは、詩、哲学、絵画、カバラ、さらにワインまでもが、記譜法と同等の規準として扱われうるのである。現在、ソニー・クラシカル・レーベルと録音契約を結んでいる。作家でもあるアファナシエフは、37作の小説(うち23作は英語、14作はフランス語)を手がけている。このほか、英語による詩集を16冊、ロシア語による詩集を9冊、長編集を1冊、短編集を1冊、ダンテの『神曲』の評釈をまとめた大著を1冊、随筆集を3冊、執筆している。さらに、《展覧会の絵》と《クライスレリアーナ》から霊感を得た2つの劇作品を書き上げ、みずからピアニストおよび俳優として4か国語で上演した。またアファナシエフは、先ごろカフカの『流刑地にて』にもとづく戯曲を完成させたばかりで、同作品内ではモートン・フェルドマンの《マリの宮殿》を演奏している。アファナシエフは、室内楽の演奏にも情熱を注ぐほか、数年にわたり世界各地の様々なオーケストラを指揮してきた。彼は、自身が尊敬する指揮者たち――フルトヴェングラー、トスカニーニ、メンゲルベルク、クナッパーツブッシュ、ブルーノ・ワルター、クレンペラー――が織りなしたサウンドとポリフォニーの一端を表現できるよう努めている。 |