王子ホールマガジン 連載
ぶらっとの顔 Vol.3
西山まりえ
王子ホールマガジン Vol.45 より 好評のランチタイム・シリーズ「銀座ぶらっとコンサート」では、様々なアーティストがホストとなってシリーズを展開していますが、そのなかで一番新しいシリーズが『西山まりえの歴女楽』。実は記念すべき第1回の「ぶらっとコンサート」の出演者でもあります。 |
西山まりえ(ハープ/チェンバロ) チェンバロとヒストリカル・ハープ、2種の古楽器を自在に操る希有なプレーヤーとして世界的に知られ、数多くのコンサートや録音に参加、幅広いジャンルの音楽家と共演している。音楽番組、教養情報番組などTV出演も多く、アンサンブル「アントネッロ」メンバーとしても活躍。ヒストリカル・ハープのワークショップ「ハープ女学園」やチェンバロのレクチャー&ワークショップ「クラヴサン・クラブ」を主宰。古楽ワークショップ「信州アーリー・ミュージック村」芸術監督。日本演奏家連盟、日本ハープ協会、日本チェンバロ協会、日本イタリア古楽協会会員。 オフィシャルHP http://marienishiyama.com |
Q 西山さんは「ぶらっとコンサート」の第1回公演(2003年10月14日「アントネッロ」)にも出演されました。それから10年を経てご自身のシリーズ「西山まりえの歴女楽」が始まりました。 西山まりえ(以下「西山」) 最初は「アントネッロ」の一員としてステージに立ちました。ミュージシャンとして生きていこうと決意したばかりのころで、王子ホールでの経験を通じて、単に演奏するだけではなく、どういうパフォーマンスをお客様に提供し、どうやってより豊かな時間を過ごしていただけるかを意識しなければならない――ということを学びました。 |
Q 去年の第1回公演を終えて、難しさや手応えなど感じたことはありますか? 西山 第1回のテーマだったマリー・アントワネットは断頭台という場所で生涯を終えました。それは悲劇的ではあるけれども、彼女には彼女なりの幸せだった時間もあったろうし、逆に私が幸せと感じるようなことを彼女は経験できなかったかもしれない。何百年という時間を経て、彼女とは全く異なる人生を歩んでいる私が、彼女の人生における『点』にまつわる音楽を演奏するんですけれども、それだけではなく彼女の人生の浮き沈みの流れを1時間のコンサートでお伝えするのは難しかったですね。責任も大きいなと感じました。 |
Q 『歴女楽』シリーズは歴史的な人物に焦点を当てて、その人にまつわる音楽や背景のお話しをする、というスタイルになっています。 西山 とりあげる人物はもちろん歴史上の有名な人物ですが、ほとんどは自分が望んでその立場になった人ではありません。いわゆる庶民よりは豊かな生活をしていましたが、それでも自分の境遇を受け止めなければいけなかったし、目立たなければいけない運命でした。そういう人たちの人生にも、必ず音楽が流れていたと思います。ある人物が好きだった音楽や人生の終わりに聴いていた音楽は、その人物について多くを語ってくれます。私は父を亡くしていますが、父が死ぬ直前まで聴いていた音楽があって、それひとつをとっても父の人生を物語っているように感じます。そのように、ある人物にまつわる音楽を社会の流れのなかに置いてみてみると、また新たな発見が生まれるでしょうし、一人ひとりが自分の人生を重ねあわせられるようになるのではないかと。『歴女楽』に出てくるのは歴史上の人物ですけれども、人類誰もがヒロインであり、ヒーローであると思うんです。「皆さんも物語の主役であり、皆さんの人生にも流れている音楽があるはずです」という想いが伝われば嬉しいですね。 (文・構成:柴田泰正 写真:keiko kurita 協力:ムジカキアラ) |
【公演情報】 |
>>ページトップに戻る |