エドガー・モロー 一問一答
王子ホールマガジン Vol.55 より 王子ホールではこれまでに「transit」シリーズにて数々の新しい才能をご紹介してきましたが、この6月に登場するのはワーナー・クラシックスの『ライジング・スターズ』にも選ばれ、現在欧米のコンサートシーンを破竹の勢いで席捲しているエドガー・モロー。11歳でオーケストラとの初共演を果たして以来、ソリストとしてはもちろん、室内楽奏者としても引く手あまたの俊英です。6月のリサイタルではロマン派チェロ・ソナタの代表曲を中心に、その才能の幅を存分に味わえるプログラムを聴かせてくれます―― |
エドガー・モロー(チェロ) 1994年パリ生まれ。4歳でチェロを、6歳でピアノを始める。パリ国立高等音楽院でフィリップ・ミュレールに、ドイツのクロンベルク・アカデミーでフランス・ヘルメルソンに師事。2011年国際チャイコフスキー・コンクール第2位、14年ヤング・コンサート・アーティスツ国際オーディション第1位ほか受賞多数。これまでに数多くの一流指揮者、オーケストラ、室内楽奏者と共演を重ね、世界各地の音楽祭に招かれている。14年デビュー・アルバム「PLAY」、15年には「ジョヴィンチェロ〜バロック協奏曲集」をリリース。使用楽器は1711年ダヴィッド・テヒラー製チェロ。 |
Q 今回の王子ホール公演が日本では初の本格的リサイタルになると思いますが、どういった意図で演奏作品を選んだのですか? エドガー・モロー(以下「モロー」) これまで「ラ・フォル・ジュルネ」に2回出演しましたが、また大好きな日本を訪れてリサイタルをするのを楽しみにしています。このリサイタルは多彩な様式を採り入れたバラエティに富んだものにしたいと考えました。チェロとピアノのためのレパートリーが持つ幅をお見せするために、ショスタコーヴィチやブラームスの偉大なソナタと並べてサン=サーンスやパガニーニの愛らしい小品を入れました。 Q 『ライジング・スター』として早くから注目を集めましたが、学業とのバランスが難しいと感じたことはありますか? モロー 学校に通っていたのは2014年までです。今では年間100本前後のコンサートが入っているのでもう余裕がありません。数年間は学校と演奏活動の二足のわらじを履いていたので、バランスをとるのが大変でした。簡単ではなかったけれど、きちんと学位を取得したことはアーティストとしての成長にもつながったと思います。 Q 共演者のピエール=イヴ・オディクさんについて教えてください。どのぐらい前から共演するようなったのですか? 彼の魅力はどんなところにあるのですか? モロー ピエール=イヴと知り合ったのは09年のことで、それ以来150回以上のコンサートで共演してきました! 彼は素晴らしい音楽家であり、室内楽のパートナーとしては理想的な存在です。チェロのレパートリーを熟知しているだけでなく、一緒に弾いている人物に耳を傾け、そのフィーリングをつかむことができる。それはピアニストとして何よりも賞賛すべき資質です。 Q お使いの楽器について教えてください。どういった経緯で入手されたのですか? モロー ダヴィット・テヒラー(1711年製)のチェロを8年前から使っています。これは骨董商を営んでいる僕の父が、しばらく前に(僕のためではなくて)投資のために購入したものなんです! ですが09年にロストロポーヴィチ国際コンクールに出場したときに、使わせてほしいとお願いしました。そしてコンクールで入賞し、コンサートやコンクールの回数が増えたことで楽器を引き続き使うことができました。そして父からついにこの楽器を買い取ったので、いまでは完全に僕のものです! (文・構成:柴田泰正 写真:Julien Mignot 協力:Eアーツカンパニー) |
【公演情報】 transit Vol.7 エドガー・モロー |