キアラ・バンキーニ 一問一答
2010年3月に待望の初来日を果たす古楽界の大御所、キアラ・バンキーニ。今回の公演では、同じく古楽界を代表するソプラノのマリア・クリスティーナ・キールとともに、ボッケリーニの『スターバト・マーテル』を披露してくれます。来日を前にボッケリーニ、そして古楽の魅力について語ってくれました。 |
キアラ・バンキーニ (ヴァイオリン) スイス・ルガーノ生まれ。世界をリードするバロック・ヴァイオリニストの一人と認められ、主要な古楽フェスティバルに毎回招かれている。ジュネーヴ音楽院 とハーグ音楽院で学んだ後、シャーンドル・ヴェグとシギスヴァルト・クイケンの下で研鑽を積んだ。その後、ラ・プティット・バンド、エスペリオンXX、 ラ・シャペル・ロワイヤルなどのアンサンブルに加わり、国際的ソリストとして頭角を現した。1981年に独自の室内オーケストラ「アンサン ブル415」を創立して以来、コンサートやレコーディングで国際的な活動を展開している。 |
Q 日本ではボッケリーニは人気がなく、メヌエットが知られているぐらいです。あなたにとってボッケリーニはどういう作曲家なのでしょうか? キアラ・バンキーニ(以下バンキーニ) ボッケリーニはこう書いています。 1992年 スターバト・マーテル ボッケリーニの生涯は非常に困難で苦しみ多いものでした。彼はチェロの名手としてまた作曲家として尊敬されていましたが、 作曲家の例に漏れず、貧困の中で人びとに忘れられたまま生涯を閉じました。ボッケリーニは弦楽のための三重奏、四重奏、五重奏、六重奏など、300曲以 上の器楽曲を書きましたが、交響曲も書いています(例えば『悪魔の家』)。日本の皆さんにぜひボッケリーニを知ってもらわなくてはと思っています。 |
Q ボッケリーニの『スターバト・マーテル』はソプラノと弦楽五重奏というきわめてユニークな編成になっています。あなたにとってこの作品の魅力はどういうと ころなのでしょうか? バンキーニ この作品の編成は本当に独特です。人の声はあたかも6番目の声部のようになっています。第1チェロのソロ が歌に対して同じ強さで応答します。この作品の美しさはボッケリーニの深い宗教心から生まれたものでもあります。 |
Q あなたが初めてバロックヴァイオリンや古楽器に興味をもたれたのはいつ、どんなきっかけからですか? バンキーニ 1978年に私はニコラウス・アルノンクールとシギスヴァルト・クイケンに出会いました。そのときバロッ ク音楽の新しい演奏法に強く惹かれ、バロックヴァイオリンを勉強すること、そしてバロック期のあまり知られていない作品を発掘することに専念しようと決意 したのです。 |
Q あなたのお弟子さんたちは世界の音楽界で活躍しています。ジュリアーノ・カルミニョーラから自分は今でも古楽器の演奏についてあなたに助言を乞うことがあると聞いて感銘を受けました。古楽を教えるにあたって技術的および芸術的にどんな点を重視されていますか? バンキーニ 古楽器による演奏についてはまだ究めつくされているわけではないと思いますよ。私は現在、ヴァイオリン族 とその演奏法について書かれた17~18世紀の数多くの概論を研究しています。そして、そこに込められたメッセージ--非常に詳しくて明快なものが多いのです--をできるだけ深く理解し、できるだけ多くの情報を教え子たちに伝えようと努めています。そしてこんどは彼らが自分の演奏法を見つけていく番です。現代 の若い音楽家にとって危険なのは、膨大な数の演奏をレコーディングで聴き、その影響を受け、それを無批判にコピーすることが簡単にできることです。自分自身の演奏を創り、知識を深めるのでなく、ね。 |
Q 日本の聴衆にひとことメッセージをお願いしていいでしょうか? バンキーニ 日本の皆さんはボッケリーニと彼の『スターバト・マーテル』がきっと好きになると思いますよ。皆さんに新 しい作品とあまり知られていなかった作曲家のことを知っていただく機会を得てたいへんうれしく思います。 (提供:アレグロミュージック) |
【公演情報】 2010年3月11日(木) 19:00開演(18:00開場) |
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