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王子ホール委嘱作品 連作歌曲「二本の木」

王子ホールマガジン Vol.43 より

本誌で1年にわたって追いかけてきた連作歌曲「二本の木」の制作過程。公演に先立って行われたリハーサル、そして公演後の打ち上げの様子を、出演者および原作者小沢 爽・千緒夫妻ご家族のコメントとともにご覧ください――


ホール・リハーサルは数日にわたって行われ、
通し稽古には爽・千緒夫妻の2人のご子息の姿も。


ホワイエには爽・千緒夫妻の写真と日記、
「二本の木」の絵(千緒画)をディスプレイ。


公演当日は記録的な大雪のため交通機関が大幅に乱れたものの、それでも多くのお客様がご来場くださいました。歌とピアノ、そしてクラリネットによる60分強の濃密な音楽。演奏を終えて舞台袖に戻った4人はそれぞれに胸いっぱいの様子でした――


終演後はホワイエにて打ち上げ。
爽・千緒夫妻のご家族をはじめとする関係者を
交えて。


「二本の木」の絵を囲む出演者4人。
再演の機会を願いつつ……。

 

出演者のコメント

単に悲しいお話にしたくなかった。しかしその意志の実現には、作曲上常に困難を伴った。今の自分だからこの困難と向き合えたのだと思ったし、新たな創作への自信と励ましになった。それはこの作品を通じて鑑賞者に感じてもらいたい「生」への希望と繋がる心境でもあった。如何に?
――加藤昌則

生きるということを、普段の何気無い生活でどれだけ意識、実感するでしょう。人は奇跡の結晶により生かされていること、生きるために生きるということを「二本の木」は再認識させてくれました。音楽家として「二本の木」と向かい合えたことを、心より幸せに思います。
――宮本益光

人間の紡ぎだす言葉・声・音の美しさを心に響かせながら作品に向き合い、本番では、そこにクラリネットの音色が寄り添い、溶け込んでいく幸せを噛みしめながら演奏させて頂きました。
――豊永美恵

爽さん千緒さんの思いやりと愛情に引き寄せられるように、沢山の手を経て生まれた二本の木。その心に響く歌曲の初演を歌わせて頂き未だに胸が一杯です。また皆様の前で演奏されながらこの二本の木が熟して行くことを心から願っております。
――澤畑恵美

 

爽・千緒夫妻ご遺族のコメント

このたび「二本の木」が美しく温かい歌曲として生まれかわりました。宮本さんと加藤さんにお預けした両親の日記。そこから丁寧に拾っていただいた言葉が詩となりました。両親の葛藤や祈り、口ずさんでいた唄。若かった頃の出会いの思い出までもが旋律となりました。甘い幻想であったかもしれないギリシア神話の「二本の木」に近づけたことがなによりの救いとなりました。
――小沢北太郎(長男)

両親の闘病という厳しい現実は、私達家族にとっても辛く苦しいものでした。「二本の木」に書かれた言葉は、そのような怒濤の時間の中で発生したものです。しかし7年の時を経て、思いもよらず歌曲となった両親の言葉は、リアリティの呪縛から解き放たれた鳥のように自由に羽ばたき、やがて不思議な清々しさを残してくれました。それは『これからは、この素晴らしい歌とともに生きていける』……そんな幸福感だと思うのです。
――小沢冬平(次男)

 

宮本益光がNHKでドキュメンタリー化された「二本の木」と出会ってから4年、夫婦の物語が連作歌曲というかたちで新たな翼をえました。この作品が日本各地で歌い継がれていくことを願ってやみません。

(文・構成:柴田泰正 写真:藤本史昭・横田敦史 協力:二期会21、コンサートイマジン)

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